Customer Columnお客様コラム
第16回 光熱費を考える②
家を建てる際には、断熱の重要性についていろいろ聞かされると思います。
家の断熱性が高いと省エネで快適になると言う様な話で、家の断熱性が高いと家の中から外へ逃げて行く熱の量が少なく、暖房負荷(暖房時期にある温度に室温を保つ為に必要な暖房エネルギー量)が小さくなる(=省エネになる)と言う事です。
間違ってはいませんが、こう言った説明だけ聞かされると、聞かされる方は「断熱性を高くすれば光熱費が安くなる」と勘違いしそうです。
僕の気のせいかもしれませんが、戸建住宅の暖房負荷は集合住宅より高いと言う事をHMや工務店は言わない様に思います。
戸建住宅の暖房負荷が集合住宅に比べ高くなるのは、外気と接する壁等(外皮)が構造上どうしても多くなるからだと思います。
例えば僕のケースでは、新居の外皮面積は以前住んでいたアパートの2.2倍になります。
このアパートでは、屋根と南北東面の壁全面と西面の壁の半分が外気に接していたのでアパートにしては外皮が多く2.2倍で済んでいますが、同じアパートの中間階の中部屋と比べるなら約7倍にもなります。
熱の逃げる部分が2.2倍になるなら、その部分の熱の逃げ難さを2.2倍以上にしなければ熱損失量は前より減らない事になります。
7倍となるとそれはもう大変です。
戸建住宅の断熱性が特に重要視されるのは、その構造上 断熱性が低いと暖房負荷が過大になるからだと思います。
家を建てた人の体験談として、「以前より光熱費が増えた」とか、「思ったより寒い」と言った事を見聞きしますが、アパートからの住み替えなら普通に有り得る事では無いでしょうか。
この手の体験談は、省エネ住宅に対して勘違いしたか期待し過ぎたかのどちらかとだと思います。
前置きが長くなりましたが、僕にとっての関心事は、暖房費が以前より増えない事と寒くない事です。
Ginger HouseのQ値は2.54で、家全体の熱損失量では241.39W/Kと言う事になっています。
『なっています』と書いたのは、この中には換気による熱損失(43.75W/K)も含みますが、これは必要換気量での値で換気次第で変わる事と、そもそも全て計算値で実際の熱損失量を示すものでは無いからです。
それでこの241.39W/Kは、家の内外の温度差が1℃の時の1時間あたりの熱損失量が241.39Wである事を示しています。
温度差が10℃なら1時間あたり約2.4kWの熱が外に逃げて行く計算です。
ただ、家には生活熱と言う熱源や取得熱もあるので、暖房負荷は損失分からこれらを差し引いた分になります。
文字だとピンと来ないので、Ginger houseをモデルにしてQ値の違いで熱収支がどう変わるかを試算してみたのが次のグラフです。
外気温が下がる時期は取得量が減る事もあって、Q値の違いが顕著に出る様です。
夜間の様に日射が無く、生活熱も少なく、気温が下がる時間帯の事を考えるとQ値が低いほど良さそうですが、Q値が低いと月によってはかなり熱余りになるのが気になります。
それで暖房費が幾らになるかは、使用する暖房機器によっても変わります。
機器の比較までは手間なので、Ginger Houseに実際に設置したエアコンの性能(APF=6.4)で暖房費を試算してみたのが次のグラフです。
高効率エアコンを使う事が前提になりますが、Q値2.7(Ⅳ地域・等級4)でも年3万円は超えない感じです。
アパート時代の直近の暖房費は年36,435円なので、Q値=2.54でも暖房費は以前より減る事が期待出来そうです。
それでは最後に実際の結果です。
暖房分の電気使用量は次の表の通りで、この冬の暖房費は昨冬から約9000円減の27,648円となりました。
アパート時代の暖房機器の使い方に問題がありそうですが、Ginger Houseでは1台のエアコンでほぼ全館暖房され、就寝時と起床時に寒さで震える事が無かった事を考えると、暖房費以外の部分で大きな違いがあったと思います。
一方で体感的には「寒い」と感じる時が多かったのも事実です。
ただ、これは冒頭書いた様に僕も期待し過ぎたかもしれません。
一応、データ的には次のグラフの通り朝7時の1階LDKの室温で14℃を切った事はありませんでした。
また、一般に室温と壁等とに温度差があると体感温度が低くなると言われますが、サーモグラフィで見て回ったところ、窓等の開口部を除けば1℃程度しか温度差は見られませんでした。
次回の話になりますが、夏は室温の割に涼しく感じもしています。
どうもGinger Houseでの体感温度が全体的に低い感じです。
自信はありませんが、個人的にはGinger Houseの構造と関係あるのではと思っています。
具体的には、家の熱容量が少ないからではないかと思います。