Customer Columnお客様コラム
第8回 長期優良住宅について
長期優良住宅については、エヌテックさんは全棟がそうなので、このコラムで触れる気はありませんでした。
ですが、検討中の人にとっては重要な事かもしれないので、この際書いてみようと思います。
もともとこのコラムは順番を気にせず書いているのですが、今回はそれに割り込む形で書きます。
長期優良住宅について考える場合、住宅だけを見ると何か見落としそうな気がします。
国が長期優良住宅の建築を促進しているのは単に手段であって、日本の住宅の『あり方』を変える事が目的だからです。
変わらない可能性もあるので、今を基準にして変わった部分だけ考えるのも良いのですが、やはり変える事を目的にしている以上、変わった時の状況で考えてみる必要がある様に思います。
それで、実際に変わるのか?と何時変わるのか?は置いておいて、制度の背景とあり方が変わった後を考えてみます。
長期優良住宅については、エヌテックさんから懇切丁寧な説明があると思いますので、僕はエヌテックさんが業者の立場上言えない事を書いてみたいと思います。
よくよく考えれば分かる事ですが、この先新築の家の数は減って行きます。
その理由は人口が減る事は勿論ですが、税や福祉等の個人負担が増大し、一方で収入は一部の人を除き増えないからです。
例えば可処分所得が今より100万円減ると新築の家を諦める人が出て来る様に、新築の家は誰でも建てられる物ではなくなると思います。
その国民性から日本人は新築好きだと思いますが、新築を諦めたからといって、マイホームを諦める訳では無いと思います。
中古住宅をローンで買う場合、一番の心配はローンの完済までに家が使えなくなる事です。
買う側が素人なので家の価値が分からない、と言う点では新築でも中古でも変わりませんが、中古住宅は余寿命が短いのでこの点リスクが高くなります。
中古住宅は目で見て確認出来るのは良いのですが、確認出来るのは基本的にガワの部分だけです。
つまり重要な事が殆ど分かりません。
今でも新築を無理して建てる人が少なからずいると思いますが、その背景にはそれなりの中古住宅だと安くは無い事と、その割に無視できないリスクがある、と言う事も大きい様に思います。
そうであれば、中古住宅を買う人を増やしたいなら、単に長く使える家を建てるだけでは駄目と言う事になります。
求められるのは長く使える事ではなく、それが誰にでも分かる事だからです。
ここまで考えれば、長期優良住宅が何故認定制度で、維持保全を義務付け、その履歴を残すと言った面倒な事をセットで要求するのか理解できると思います。
勿論、仕様の部分については新築を建てる人にとっても意味があります。
それでは、長期優良住宅が中古市場に供給されると状況はどうなるでしょうか。
既に住宅の数は足りているのに人口が減るので、住宅の数は余ります。
当然価格は下がる筈ですが、質に拘る人がいる事を考えると、価値のある物件はそれ程下がらないかもしれません。
その『価値』の見極めですが、長期優良住宅は「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」である事が認められた住宅で、維持保全の履歴も付いてきます。
余寿命の部分については今より安心して買え、賃貸の様に場所や好みで選べば良い事になりそうです。
長期優良住宅は売る時有利ですよ、と言われますが、流通量が増えて来れば有利不利どころか売り物になる/ならない位の差にならないでしょうか?
そして新築の需要が少ない訳なので、更地にしてもそうそう売れないと言う事になります。
長期優良住宅が目指す所はこんな所でしょうが、実際はここまで極端な状況にはならないと思います。
その理由は、大きな不利益を被る人が出かねないので、国としては徹底しては出来ないと思うからです。
実際に長期優良住宅を建てる事は義務ではありませんし、長期優良住宅にする事で戻って来る額を見ても、元々その様な家を建てる人の背中を押す程度になっています。
ただ、それなりの数の長期優良住宅が建つ訳ですから、何れは大なり小なり影響が現れるのではと思います。
もし新築の家を検討中で、長期優良住宅に近い仕様の家と、その維持まで考えているのなら、長期優良住宅にしない理由が無い様に思います。
長期優良住宅で建てるかに関わらず、メンテナンス含め依頼先と長い付き合いを望むなら、もう一つ考えておいた方が良いと思う事があります。
それは、大きなお世話なのですが建築業者の今後についてです。
家の建築数が相当数減る事になれば、当然競争も熾烈になります。
この生き残りは、大手だから安心という物でもありません。
もし本当に住宅がストックの方へ向かうなら、保全やリフォームの仕事の方が多くなって、住宅の建築では食べていけなくなるかもしれません。
長期優良住宅を建てる場合は特に、その後の付き合いが長くなる訳ですから、依頼先が生き残る企業なのかも良く考えた方が良いのでは?と思います。