WHO(世界保健機関)では、「快適で健康的な居住環境」の概念を次のように提示している。
快適で健康的な居住環境とは、住居が構造的に心地よく、事故による危険性がなく、そこに住む人々が当たり前の住生活を送ることができる十分な空間が保証されている環境である。そこには飲料水の適切な供給設備と衛生的生活及び清潔のための付帯設備と、衛生的な廃棄物の収集、保管、処分のシステムがあり、気候と外界の環境の変化から居住者を守る条件を備えていなければならない。また、特に過敏な人々、生活に特別な支援を必要とする人々をも含め、そこに住む人々を身体的または精神的に過度の負担から適切に保護する機能を持つべきものである。
さらに、健康的な居住環境には、健康的で快適な温湿度条件と安全で適切な人工照明の提供、ひどい騒音がないこと、有毒、有害な化学物質や汚染菌がないこと、衛生害虫や不潔な動物から隔離されていることが必要である。そしてこのような居住環境は、人々の快適で健全な関係、教育的配慮、文化的要求などを継続的に支援できるものである。
WHO : Healthy Housingより
私たちは、家づくりに携わる者としてこれらの条件を高いレベルでクリアすることが、義務であると考える。
現在、日本の住宅建築において、構造および衛生面については一応のレベルに達していると言える。また、建材が含有する化学物質についても法規制が強化されている。しかし、これらの進歩に比べ、温湿度条件、特に温熱環境に対する取り組みについては、欧米に比べ大きく遅れをとっている(下図)。このようなことから、居住する人の健康にも大きな影響をあたえるといわれる温熱環境の改善こそが喫緊の課題であると私たちは考えた。
「快適な温熱環境とは、エアコンで室温を常時コントロールすること。だからたくさんの電力を消費してしまうのでは?」というのが、「快適」に対する多くの方の認識ではないだろうか? その考えにもとづけば、確かに多くの電力を消費するからゼロエネの実現は難しい。唯一可能性があるとすれば、巨大な太陽光発電パネルを設置したり自家発電設備を導入することだが、多額の導入コストが発生する。
しかし、エアコンを極力使わずに快適な温熱環境づくりができるとしたらどうだろう? 夢のような話に聞こえるが、実現は可能なのだ。そして、その快適さは一年中エアコンを稼働させて得られる適温を上回る、自然の心地よさを兼ね備えている。
私たちが目指すのは、エアコンに頼るのではなく、自然の力をじょうずに利用した心地よい快適さ(=「超」快適)である。
・自然の力を最大限に引き出す建築とはどうあるべきか?
・得られた自然の力をいかに有効活用するか?
・エアコン等の冷暖房機器とどのように組み合わせるか?
これらのバランスの最適解を見つけることが、「快適で健康的な居住環境」につながると考える。
自然の力をじょうずに利用するから、冷暖房機器の利用時間は格段に短くなり、消費するエネルギーもわずかになる。つまり「快適を追求する」ことと「省エネ、ゼロエネを実現」することは、相反するどころか実は相関関係にあると私たちは考える。だから、快適とゼロエネとを同時に考える。それが「超省エネ&ゼロエネ研究所」の所以なのだ。